ニューメキシコ州事情
1 概観
(1)歴史・沿革
ニューメキシコ州の歴史は古く、1540年に黄金都市を求めてスペイン人が探検を始め、1598年より入植が始まったが、最初の入植者は10人のフランシスコ会修道士と129人の兵士及びその家族であった。州名は、スペイン語の「新しいメキシコ」が英語化されたものである。彼らは、英国からアメリカへの最初の入植者である英国清教徒団がプリマスに上陸する10年前にあたる1610年に、サンタフェ市をニューメキシコ州の首都として建設した。その後、米墨戦争の結果、ニューメキシコは1848年にカリフォルニア州と共にメキシコから割譲され、1912年1月6日に合衆国の第47番目の州となった。
ニューメキシコ州は穏やかな気候に恵まれた農業州であるが、同時に鉱物資源も豊かで、ネイティブ・アメリカンの時代から、スペイン統治時代、メキシコ統治時代を経て、米国の連邦に組み込まれてからも一貫して州経済に大きな役割を果たしてきた。太古の昔からトルコ石が、その後は銅、銀、鉛、亜鉛、鉄、金、石炭が発見され、さらに天然ガス、石油、ウラン鉱が発見され、数回にわたるブームで経済を発展させてきた。
鉱山キャンプの存在を記した最古の記録は1581年のものであり、サンタフェ市の南西15キロ付近のセリロス・ヒルから南に広がる地域について記述している。1610年に首都がサンタフェ市に移されているが、1630年代の市の記録に住民の職業に銀細工師の名前があることからも、サンタフェ遷都の背景には、セリロス・ヒル地区における鉱山ブームがあったと推測される。この地域では多種の鉱物が次々と発見されて繁栄が続き、1879年には鉄道が開通し、セリロス市が誕生している。しかし1930年代の大恐慌で鉱業は大打撃を受けた。
1920年代以降、州北西部のフォーコーナーズに近いファーミントン市で石炭、石油、天然ガスが発見され、パーミアン盆地(州南東のテキサス州にまたがる地域)で石油、天然ガスが発見され、ニューメキシコ州の鉱業は様変わりした。さらに1950年代のグランツ(州西部)でのウラン鉱発見は、50年代のウラン・ブームを招いた。
ニューメキシコ州には、国防政策とタイアップした技術開発があり、原子爆弾の開発を目的として設立されたロス・アラモス国立研究所は、1945年7月に世界初の原子爆弾の実験に成功した。1949年からはサンディア国立研究所も加わり、毎年、多額の予算を投入して兵器開発、宇宙開発に向けた先端技術の研究開発を行っている。また近年注目を集めているのが同州の再生可能エネルギーの実用化・推進事業、またスマートグリッドの普及である。
ニューメキシコ州では、民間人の宇宙旅行の基地としての宇宙空港が建設されている他、州内にはUFOの飛行地といわれるロズウェル町もある。
近年では、映画やドラマの撮影地としての認知度が高まっており、ニューメキシコ州映画局が主導となり、撮影誘致活動やファンのためのロケ地巡りなどの案内を行っている。2020年から現在まで映画製作による経済効果は年間10億ドルを超えている。
(2) 地誌
ア 地理
ニューメキシコ州は、州北部から南西部に向かって斜めに走るロッキー山脈系の山岳・高原地帯、州の中央を南北に流れるリオグランデ川沿いの平野(盆地)部、及びテキサス州に接する東部の平原地帯に大別される。中心はリオグランデ川沿いの部分で、サンタフェ市、アルバカーキ市、ラス・クルーセス市等の政治経済活動の中心となる諸都市が集中している。
ニューメキシコ州の面積は,314,939平方キロメートルで、全米第5位である。州全体としては、山岳地帯の比率が高く、州の面積に占める森林の割合は11.5%である。
イ 気候
アルバカーキ市の7月の平均気温は約26℃、1月の平均気温は約3℃である。同市の年間降雨量は約228mmである。
ウ 人口
2023年の国勢調査(推定)によると、ニューメキシコ3州の人口は約211万人で、現時点での最新の人口構成は白人36.8%、ヒスパニック系48.6%、アフリカ系2.8%、ネイティブ・アメリカン11.4%、アジア系2%、大洋州系0.2%である。同州は、スペイン語を第二公用語として定めている唯一の州である。
ニューメキシコ州の主要都市の人口(2023年国勢調査(推定))は以下の通りである。
【ニューメキシコ州の主要都市の人口(2021年国勢調査)】 | |
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サンタフェ市(州都) | 約8.9万人 |
アルバカーキ市(州最大都市) | 約56万人 |
ラス・クルーセス市 | 約11.4万人 |
エ その他
【ニューメキシコ州の花・鳥・木・動物)】 | |
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州花 | ユッカ(Yucca) |
州鳥 | ミチバシリ(Roadrunner) |
州木 | コロラド・ピニョン(Colorado Pinon) |
州の動物 | アメリカクロクマ(American Black Bear) |
2 政治
(1) 政治情勢概況
ニューメキシコ州は、伝統的にヒスパニックやネイティブ・アメリカン等のマイノリティー文化の影響が大きく、この状況を反映して民主党の勢力が強い。大統領選挙はやや例外的で2000年及び2004年の大統領選挙では、民主党候補に敗れはしたものの共和党のブッシュ候補が善戦するなど両勢力がほぼ均衡していた時期もあった。しかし、2008年の選挙で大躍進した民主党が連邦上下院の全5議席を占めてからは共和党にとって逆風が吹き、2010年の選挙でさえ連邦下院で共和党議員1名の返り咲きにとどまり、以後民主党が勢力を保っている。
一方、州レベルでは民主党優勢は著しく、特に2002年のビル・リチャードソン(Bill Richardson)知事による共和党からの知事ポストの奪回、2008年の選挙における州知事を始めとする政府要職の民主党独占、州議会における民主党勢力の圧倒的優位と、民主党色は一段と強まった。しかし2010年の選挙では、全米的な民主党批判に加え、選挙戦の過程で進行したリチャードソン知事への評価の悪化が影響して、共和党のスザナ・マルティネス(Susana Martinez)候補が民主党支持層にまで食い込んで州知事選を制し、州政史上初の女性知事となった。さらに共和党は州務長官ポストを獲得し、州議会で民主党との議席数の差を縮めた。マルティネス知事は、州の税制改革や財政赤字への取り組みを始めとする州経済の活性化につとめ、2014年の州知事選挙では圧勝し再選した。
2018年の選挙では、民主党現職のミシェル・ルーハン・グリシャム連邦下院議員が同じく共和党のスティーヴ・ピアス連邦下院議員と争い、ルーハン・グリシャム議員が勝利し、初のヒスパニック系民主党知事となった。2022年の選挙では、ルーハン・グリシャム知事がトランプ前大統領の支持を得た気象予報士マーク・ロンチェッティ候補(共)と接戦となったが、再選を果たした。
(2) 連邦議員
ア 連邦上院議員(2議席)
共和党のピート・ドメニチ(Pete Domenici)連邦上院議員の引退によりオープンシートとなった2008年11月の選挙で、民主党のトム・ユーダル(Tom Udall)連邦下院議員が同議席を獲得し、2012年の選挙では、オープンシートとなった議席を巡って民主党のハインリッヒ連邦下院議員が勝利したため、民主党が2議席を占めている。2014年の中間選挙でユーダル連邦上院議員が改選を迎えたが、ユーダル議員の優位はゆるぎなく再選を果たした。2018年の中間選挙においても、ハインリッヒ議員が圧勝で再選を果たした。2020年、ユーダル議員は再選を目指さなかったため、当時のベン・レイ・ルーハン連邦下院議員(民・ニューメキシコ3区)が出馬を表明し、気象予報士のマーク・ロンチェッティ候補(共)と対決したが、得票率51.7%で勝利し、引き続き民主党が2議席を独占している。2024年、マーティン・ハインリッヒ連邦上院議員は、3期目再選を果たし、民主党による2議席保持が継続されている。
【連邦上院議員】 | |
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マーティン・ハインリック(Martin Heinrich)(民) | 2030年改選 |
ベン・レイ・ルーハン(Ben Ray Lujan) (民) | 2026年改選 |
イ 連邦下院議員(3議席)
2008年の選挙で現職議員がそろって連邦上院議員に出馬したため、全てがオープンシートとなり、選挙の結果、民主党の独占体制となった。2010年の選挙で第2区のみ共和党の前職議員が返り咲いた後、2012年以降の選挙では、現職が優位に選挙戦を進め議席を維持している。2018年の中間選挙では,現職のミシェル・ルーハン・グリシャム議員(民・1区)とスティーヴ・ピアス議員(共・2区)が州知事選への出馬を発表し,オープンシートとなった議席を巡って両選挙区で民主党候補が勝利し、全議席が民主党の議席となった。
2020年の選挙では、ニューメキシコ1区で再選したデブラ・ハーランド連邦上院議員が、2021年にバイデン大統領によりアメリカ先住民部族出身者として初となる閣僚メンバーとして内務長官に指名された。そのためオープンシートとなった議席を巡る特別選挙が6月に開催され、当時ニューメキシコ州下院議員であったメラニー・スタンスバリー議員(民)が同じく民主党候補であったアントワネット・セディヨ・ロペス・ニューメキシコ州上院議員に勝利した。2022年選挙で、スタンスバリー議員が再選を果たした。
ニューメキシコ2区では、2018年選挙で民主党ソーチル・トレス・スモール候補が接戦の末に共和党イベット・ハーレル候補に勝利したが、2020年選挙で再び両者は対決し、ハーレル候補が得票率7%の差をつけて勝利したため、共和党が議席を奪回した。2022年選挙で、民主党新人候補のゲイブ・バスケス氏がハーレル議員に勝利し、初当選した。2024年選挙でバスケス議員は、2期目再選を果たした。
ニューメキシコ3区は、当時のベン・レイ・ルーハン連邦下院議員(民)が2020年ニューメキシコ州選出連邦上院議員選に出馬表明したため、新人候補のテレサ・レガー・フェルナンデズ議員が共和党候補に大きな差をつけて議席を獲得した。2022年及び2024年の選挙では、レガー・フェルナンデズ議員が再選を果たした。
【連邦下院議員】 | |
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第1区 | メラニー・スタンスバリー(Melanie Stansbury)(民) |
第2区 | ゲイブ・バスケス(Gabe Vasquez)(民) |
第3区 | テレサ・レガー・フェルナンデズ(Teresa Legar Fernandez)(民) |
(3) 州議会と州政府
ア 州議会
州議会は上院(定員42名)と下院(定員70名)より成る。2008年の選挙では民主党が州上下両院で議席を伸ばしたが、2010年には共和党が大きく躍進し、下院では1929年来最多の議席数となった。2014年の選挙ではオバマ政権への不満の波に乗った全国的な共和党の勢いは当州にも影響を及ぼし、過去60年来で初めて共和党が州下院で多数を獲得し、共和党37議席、民主党33議となった。2016年および2018年の選挙では、揺り戻しが起こり、州上下両院で民主党が多数となり、それ以降民主党の優勢が続いている。
【州上院】 | |
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民主党 | 27名 |
共和党 | 15名 |
計 | 42名 |
【州下院】 | |||
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民主党 | 45名 | ||
共和党 | 25名 | ||
計 | 70名 |
イ 州政府の主要政策と課題
ニューメキシコ州は近年人口増加が著しいが、特にヒスパニック系人口の増加が著しく、ヒスパニック系を含めたマイノリティーが過半数を占めるという米国でも極めて特殊な州である。州南部でメキシコと境界を接していることが、以下二つの点で州政府に対し課題を投げかけている。一つは国境の安全保障であり、不法移民の流入及び麻薬取引はそのまま治安問題につながる可能性がある。もう一つは、州民の生活レベル及び教育レベルの向上である。
また、ニューメキシコ州は生活レベル、教育レベル、医療レベルで全米最低レベルにあるが、ルーハン・グリシャム知事による主導のもとこれらの改善に取り組んでいる。
ウ 州知事選挙
2010年の州知事選挙ではマルティネス候補(共)は、リチャードソン知事への州民の不満を汲み上げ、選挙キャンペーンではリチャードソン政権批判に終始し、民主党支持のヒスパニック票を20%獲得して、知事選を制した。なお、全米的な民主党離れ及びティーパーティ運動も追い風となった。2014年の改選では、5名の挑戦者の中で州司法長官のゲーリー・キング候補(民)が順調に支持率を上げたが、マルティネス知事が終始リードを保ち、ほぼ選挙前の世論調査結果どおり過去最大の得票差(15%)をつけての勝利であった。同知事は民主党優位にある同州の中にあって、民主党及び無所属の有権者らを惹きつけ党派を超えた支持を得ていた。。2018年の選挙では,マルティネス知事は任期満了のため、当時現職のミシェル・ルーハン・グリシャム連邦下院議員(民・1区)とスティーヴ・ピアス連邦下院議員(共・2区)が争い、ルーハン・グリシャム議員が得票率約13%の差をつけて勝利した。2022年選挙では、トランプ前大統領の支持を得た気象予報士のマーク・ロンチェッティ候補が出馬し、再選を目指すルーハン・グリシャム知事と接戦となったが、ルーハン・グリシャム知事が再選を果たした。
【ニューメキシコ州公選職】 | ||
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知事(Governor) | ミシェル・ルーハン・グリシャム(Michelle Lujan Grisham) | (民) |
副知事(Lt. Governor) | ハウウィー・モラレス(Howie Morales) | (民) |
州務長官(Sec. of State) | マギー・トローズ・オリバー(Maggie Toulouse Oliver) | (民) |
州司法長官(Attorney General) | ラウル・トレズ(Raul Torrez) | (民) |
州財務長官 (Treasurer) | ローラ・モントヤ(Laura Montoya) | (民) |
(4)その他
主要都市の市長は次の通り。
【主要都市の市長】 | ||
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サンタフェ市(州都) | アラン・ウェバー(Alan Webber) | 2025年改選 |
アルバカーキ市 | ティム・ケラー(Tim Keller) | 2025年改選 |
ラス・クルーセス市 | エリック・エンリケ (Eric Enriquez) | 2027年改選 |
3 経済及び産業
(1) 経済概況
2024年のニューメキシコ州の州GDPは約1123億ドル。平均個人所得は54,428米ドル(2023年)。主要な貿易相手先はメキシコ、中国、コロンビア、カナダ、英国などであった。2024年10月のニューメキシコ州の失業率は4.3%で、全米平均(4.1%)を若干上回った。
(2)主要産業
ア 農業
歴史的に農業はニューメキシコ州の基幹産業の一つであり、主な農作物は干し草や穀物類である。タマネギ、ジャガイモ、乳製品も重要な農作物となっている。その他、ニューメキシコを特徴づける唐辛子、マツの実などの生産も盛んで、ナッツの一種のピーカンが特産物となっている。
イ 鉱業
ニューメキシコ州の鉱業は、政府・公共部門に次ぐ主要産業となっている。主に、石油(全米2位)、天然ガス(同4位)、石炭(同13位)を産出しているが、その他にも、ウラン鉱石、マンガン鉱石、モリブデン、銅、金、銀、カリウム塩、石灰、真珠岩(パーライト。火山岩の一種。これを砕いて作った砂は保水力が高く、園芸用に使われる)なども産出する。
ウ 公営事業・政府関係
ニューメキシコ州は、公営事業・政府関係の雇用数が最も多く、全体の4分の1以上を占めている。米国最初の原子爆弾の開発研究所であり、広島に投下された原爆が製造されたともいわれるロス・アラモス科学研究所が現在も原子力分野の研究所として質・量とも米国随一を誇っており、また、米国最初のミサイル基地となった州中南部のホワイト・サンズ・ミサイル発射場が現在も軍用航空機の開発・試験場として有数の規模を誇っている。同州は、核エネルギーや軍事技術関係の研究所等が多いため、連邦政府の支出が州経済の欠かせない支柱となっている。
エ 製造業
アルバカーキ市近郊に集中している製造業は、食料品や鉱物の加工処理、化学薬品、電気機器や軍需品が主体である。ハイテク製造業のほとんどが防衛関連産業であり、州経済にとって重要な柱となっている。近年は、ネット・フリックス社の撮影現場を誘致するなど映画関連産業も盛んである。
オ 観光業
観光業は、州の主な収入源となっている。現在でも、ネイティブ・アメリカンのプエブロ族が暮らしている住居、国立公園(カールス・バッド洞窟群)や国定公園(アズテック遺跡群、ホワイト・サンズ)及び州の最大行事であるバルーン・フェスタ(熱気球大会。毎年11月開催)などに、毎年何十万人もの観光客が訪れている。
カ 宇宙産業
ニューメキシコ州は商業ベースの宇宙旅行の拠点として「スペースポート・アメリカ」を2011年に建設し、バージン・ギャラクティック社,UPエアロスペース社などが再利用型宇宙シャトルを使用し、民間人向けの宇宙旅行を計画している。
4 文化
(1) 教育
ニューメキシコ州には約978の公立小中高等学校があり、約32万人の生徒が学んでいる。
義務教育年齢は5歳~18歳までで、2023年の高校卒業率は76.7%であり、全米レベルの87%に達していない。学力テストにおいても全米で最下位レベルにある。その背景に、州内の公立学校では、ヒスパニック、アメリカ先住民、英語を第二カ国語とする学生が全体の 60%以上を占めていること、および高い貧困家庭率があげられる。このため、州政府は教育予算を増加 し、特に貧富の差が現れやすい就学前教育の拡充に力点を置く政策を一貫して実施してきている。
高等教育機関としては、ニューメキシコ大学をはじめ州立の4年制高等教育機関が7校,セント・ジョーンズ・カレッジ等私立の高等教育機関が3校ある。大学レベルの日本語教育に関しては,アルバカーキ市のニューメキシコ大学を中心に実施されている。
(2) 文化
ニューメキシコ社会には,ヒスパニック及びネイティブ・アメリカン文化の影響が大きく、ネイティブ・アメリカンの権利主張の動きも活発で、米東部の博物館などに持ち出されたネイティブ・アメリカン所有物の返還運動などは、その代表例である。また、アナサイ(Anasai)族は、米南西部の最古の住民として確認されている。
州内には、上記ヒスパニック,ネイティブ・アメリカン等の歴史・文化状況を反映した様々な文化施設があり、代表的なものとしてPalace of the Governors(400以上の多文化に満ちた全米一古い連続して使用された公共の建物)の他、National Hispanic Cultural Center、New Mexico Museum of Art、Museum of International Folk Art、Museum of Indian Arts and Culture、Georgia O’Keefe Museum、New Mexico Museum of National History & Science、New Mexico Farm & Ranch Heritage Museumがある。
また、ヒスパニック系住民向けにテレビ・ラジオでは、スペイン語による放送も行われている。
5 治安情勢
ニューメキシコ州における2023年の主な犯罪の発生件数及び対前年比犯罪発生率は以下のとおり。
2022年(件数) | 2023年(件数) | 前年比 | |
---|---|---|---|
殺人 | 273 | 245 | -10.3% |
強姦 | 1,113 | 1,029 | -7.5% |
強盗 | 2,273 | 1,470 | -35.3% |
暴行 | 12,106 | 12,017 | 0.7% |
窃盗 | 36,884 | 36,810 | 0.2% |
自動車盗 | 10,956 | 10,427 | 4.8% |
(出典:FBI犯罪統計) |
6 日本との関係
(1) ニューメキシコ州における日系人の歴史
ニューメキシコ州の日本人の歴史は1895年頃からの鉱山労働によって始まり、鉄道労働がそれにつぎ、農業としてはかなり後年に入植が行われ始めた。戦後では鉱山ならびに鉄道労働とも殆ど無く、テキサス州エルパソ近くのメシア地方とアルバカーキ市近郊に比較的古くからの農業従事者が存在し、東部ラビングストン市には数件の大農園を営む日系人がいる。
第二次大戦中、太平洋岸沿いに住む日本人及び日系人は内陸のロッキー山脈を挟む地域に作られた強制収容所10ヶ所に収容された。ニューメキシコ州にはこうした大規模な強制収容所はなかったが,FBIが「危険分子」と認定した日系人(戦前よりあった日系人差別、日米開戦後は1942年の敵性外国人の隔離を承認した大統領令9066号に抗議した,主に移民一世の指導層)を拘留する拘留所がサンタフェ刑務所にあった。
また、同じくサンタフェにあるバターン・メモリアルホールは、2,000人のニューメキシコ州兵で編成された第200高射砲連隊が日本軍捕虜となり、秋田県花輪鉱山で働かされた記憶を風化させないために建てられたものである。
(2)文化交流
アルバカーキ市は、1996年11月に佐世保市と、サンタフェ市は、1999年10月に津山市と姉妹都市関係を締結し、活発な姉妹都市交流が行われている。また、毎年、ニューメキシコ日系アメリカ人連盟主催の「秋祭り」等が行われ、伝統文化だけでなく様々な分野で日本文化が浸透しつつある。
(3)人物交流
ニューメキシコ州からはJETプログラムにより、毎年数名の参加者を送り出している。
(4) 投資・貿易
ニューメキシコ州に進出している日系企業は4社(2024年1月現在)である。対日輸出額は、2022年において4,800万ドルで、これは同州の貿易相手国として第10位に位置する。主な輸出品は、食料品、コンピュータ・電気製品、金属加工品、鉱物資源等である。
(5) 要人往来
ア 訪米
- 1973年 辻一三佐世保市長(アルバカーキ市)
- 1985年 桟熊獅佐世保市長(アルバカーキ市)
- 1991年 桟熊獅佐世保市長(アルバカーキ市)
- 1993年10月 永礼達造津山市長(サンタフェ市)
- 1996年 4月 光武顕佐世保市長(アルバカーキ市)
- 2006年 二階俊博経済産業大臣(アルバカーキ市・サンタフェ市)
- 2009年 二階俊博経済産業大臣(アルバカーキ市・サンタフェ市)
- 2012年 朝長則男佐世保市長(アルバカーキ市)
- 2018年 薗浦健太郎総理大臣補佐官,杉山在米大使(サンタフェ市)
イ 訪日
- 1974年 ブルース・キング・ニューメキシコ州知事(佐世保市)
- 1981年 デビット・ラスク・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 1982年 ハリー・キニー・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 1983年 ハリー・キニー・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 1984年 ハリー・キニー・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 1994年 マーティン・チャベズ・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 1997年 マーティン・チャベズ・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 2004年 6月 ビル・リチャードソン・ニューメキシコ州知事(東京都)
- 2004年 9月 ラリー・デルガド・サンタフェ市長(津山市)
- 2005年 7月 ビル・リチャードソン・ニューメキシコ州知事(愛知県)
- 2016年11月 リチャード・ベリー・アルバカーキ市長(佐世保市)
- 2018年8月 スザーナ・マルティネス・ニューメキシコ州知事(東京)
(6) 在留邦人
ニューメキシコ州に在留する邦人の数は約800人(2023年5月現在)。一般的に邦人社会と現地社会との関係は良好な状態に保たれている。
(7) 姉妹州・都市関係
ニューメキシコ州では,以下の諸都市と姉妹都市関係を締結し,活発な交流を行っている。
ニューメキシコ州の都市 | 日本の都市 | 姉妹都市締結年月日 |
---|---|---|
アルバカーキ市 | 佐世保市(長崎県) | 1966年11月日 |
サンタフェ市 | 津山市(岡山県) | 1999年10月30日 |