子の親権問題・家族問題

令和7年4月7日

子の親権・連れ去り問題について

近年、海外での結婚生活等における困難に直面し、いずれかの親が、もう一方の親の同意を得ず、子どもを母国に連れ去るケースも発生しています。こうしたケースは、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)や居住地の法律に反するため、問題となる可能性がありますので、子どもを連れて居住地から移動することを考えている方は、適切な相談機関・専門家等へのご相談をご検討ください。


Q. ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)とは、どのような条約ですか?

A. 国境を越えた不法な子の連れ去りを防ぐことなどを目的として、1980年オランダで開催された国際私法会議においてハーグ条約が採択されました(2024年5月20日現在、締約国数は103か国)。我が国は2014年4月に同条約に加盟しました。


この条約の締約国は、他の締約国に不法に子を連れ去られたとの監護権者からの申立てを受けて、子が元々居住していた国に迅速に返還されるようにするための措置をとる義務を負います。親権をめぐる父母間の争い等は、子の返還後に、子が元々居住していた国の裁判所において決着することが想定されます。


上記のとおり、この条約は、もう一方の親の同意を得ない等不法に連れ去られた子の返還について定めるものですから、子の居住していた国の法律、手続に従って日本に連れてきた子は、この条約の対象とはなりません。詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。



Q. 米国の法律上、何が問題なのですか?

A. 米国の国内法(刑法)では、父母のいずれもが親権(監護権)を有する場合、または、離婚後も子どもの親権を共同で有する場合、一方の親がもう一方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています(注1)。


例えば、米国に住んでいる日本人の親が、もう一方の親の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であっても米国の刑法に違反することとなり、再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合があり得ますし、実際に、逮捕されたケースが発生しています。また、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて誘拐犯として国際手配される事案も生じています。


国際結婚後に生まれた子どもを日本に連れて帰る際には、こうした事情にも注意する必要があります。具体的な事案については、適切な相談機関・団体や専門の弁護士に相談されることをお勧めします。


(注1)16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18、 Chapter 55、 Section 1204)。州法により別途規定がある場合もあります。

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請について

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の「法定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。


ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から子の旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館に対してなされているときは、旅券の発給は、通常、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。その確認のため、在外公館では、通常、子の旅券申請についてあらかじめ不同意の意思表示を行っていた側の親権者に対し、同人が作成(自署)した「旅券申請同意書」(書式は自由)の提出をお願いしています。


なお、当館では、子の旅券申請の際には、他方の親権者の不同意の意思表示がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無を口頭にて確認させていただいておりますので、あらかじめ御承知ください。


(参考)

家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス:DV)について

一般的に家庭内暴力(DV)とは、配偶者や恋人など親密な関係にある(あった)者から振るわれる暴力を意味し、身体的、精神的、性的、経済的なもの等が含まれます。


家庭内暴力は、外部からの発見が困難な状況において行われるため、潜在化しやすく、また、加害者に罪の意識が薄いという傾向にあります。このため、周囲も気付かないうちに暴力がエスカレートし、被害が深刻化しやすいという特性があります。


DVの被害に遭われた場合には、適切な相談機関・団体や専門の弁護士に相談されることをお勧めします。


(参考)

家庭問題に関する相談はお早めに関係機関・団体へ

米国には、家庭内暴力(DV)等の家庭問題に対応する相談機関・団体が多数存在し、シェルター、カウンセリング、弁護士の紹介や法律相談、法的援護活動、生活困窮者に対する救済金申請支援及び育児支援等の一連の情報提供を受けられます。また、これらの機関・団体の中には、日本語での利用が可能なところもあります。仮に日本語利用可能な機関・団体が、居住されている州になくても、他州からの相談に応じたり、適当な機関等の紹介が可能な場合もあります。問題の兆候が見え始めたら、お早めに各種機関・団体にご相談されることをお勧めします。


相談機関・団体については、以下の情報もご参照ください。


【差し迫った危機の場合】

警察(911)

【外務省 在外公館における情報提供・支援】


【当館管轄4州(コロラド州、ニューメキシコ州、ユタ州及びワイオミング州)のDV被害者支援団体】


米国司法省 各州におけるDV対策機関・団体情報