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コロラド州事情(2015年3月)

1 概観

(1) 歴史・沿革
(2) 地誌

2 政治

(1) 政治情勢概況
(2) 連邦議員
(3) 州議会と州政府

3 経済及び産業

(1) 経済概況
(2) 主要産業

4文化

(1) 教育

5治安情勢

6日本との関係

(1) コロラド州における日系人の歴史
(2) 成田・デンバー間の直行便就航
(3) 文化交流
(4) 学術関係
(5) 投資・貿易
(6) 要人往来
(7) 在留邦人及び日系人
(8) 姉妹州・都市関係



1 概観

(1) 歴史・沿革

 現在のコロラド州(State of Colorado)の地域には数千年前より様々な部族のネイティブ・アメリカンが住んでおり,紀元700年頃にはプエブロ・インディアンが居住していた。 ヨーロッパ人が最初に訪れたのは16世紀半ばで,1700年頃にはスペイン商人が商業活動を始めていた。州名は,赤褐色の土砂で赤くなった川をスペイン語でリオ・コロラド(「赤い川」の意)と呼んだことに由来する。

 米国領としては,1803年にロッキー山脈の東側の部分がルイジアナ買収の一部としてフランスから買い入れられた。1806年には米国人による初めての実地調査が行われ,ゼビュロン・M・パイクに率いられた調査隊はコロラド・スプリングスの北部及び西部に広がる山脈を踏破した。パイクの名はパイクスピーク山の名となって残っている。ロッキー山脈西側の半分は,米墨戦争の結果,1848年にメキシコから割譲された。

 同年,加州で金鉱が発見されると,一攫千金を狙った人々が加州を目指して続々と移動したが,1850年,ジョージア州のチェロキー・インディアンのラルストン・グループが,加州への通過地点に過ぎなかった現在のデンバー市内北部で砂金を発見した。デンバー市内にある記念碑は,これをコロラド州における金発見第一号として,「ここより1マイル北で,コロラド州で初めて金が発見された」と記している。しかしこの時点では金鉱の発見に至らなかった。その後,加州のゴールドラッシュ(1849年がピーク)の熱が冷めた1858年,加州帰りでチェロキー族に連なるグリーンベリー・ラッセルがデンバー市西部で,純金に換算して622グラムの金を発見した。これが引き金となって探鉱が盛んになり,セントラル・シティ,アイダホ・スプリングス,クリプル・クリーク等,デンバー市よりはるか西の山麓地帯の数箇所で金鉱が発見された。1859年にはクリプル・クリーク金鉱でゴールドラッシュ(通称:パイクスピーク・ゴールドラッシュ)となった。(ただし探検家パイクがコロラド探検中の1807年に金発見のニュースを聞いているとも言われており,もし,これが真実であれば,コロラドの金発見第一号は1807年頃となる。)

 コロラド州の繁栄の基礎はこれで築かれ,その後,産業の中心は農業・畜産業へと移行していく。コロラド州は,米国独立の100年後の1876年に38番目の州として合衆国に加わり,このためセンテニアル・ステイト(独立100周年記念州)の愛称がある。



(2) 地誌

ア 地理

 コロラド州は,ほぼ西半分が米国西部山岳地帯,東半分が大平原地帯に位置し,南北で約450km,東西で約600kmの長方形をなしており,その面積は26万9千k㎡で全米50州中第8位の広さ(日本の総面積の約7割)である。

 コロラド州を南北に走るロッキー山脈は,全米に約80ある4,200m級の山々の内50余座を占める大陸分水嶺であり,東へ向かう河川は大平原を流れ大西洋(メキシコ湾)に注ぎ,西への流れはコロラド台地を通り太平洋へと向かっている。コロラド州の最高地点はエルバート山頂(4,398m),最低地点は アーカンサス川のカンザス州の境界地点(約1,000m)で,標準高度は全米各州の中で一番高い。


イ 気候

気温は地域にもよるが,州都デンバーの平均で以下の通り。

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

最高気温(℃)

8

10

13

17

22

28

31

30

26

20

12

9

最低気温(℃)

-9

-7

-4

0

5

9

13

11

7

1

-5

-8

年間平均湿度/38% 年間降水量/358mm 年間晴天日数/約300日  

ウ 人口

 2014年の国勢調査推定によると,コロラド州の人口は約535.6万人で,現時点での最新の人口構成(2013年の国勢調査推定による)は白人69.4%,ヒスパニック系21.0%,アフリカ系 4.4%,アメリカ・インディアン1.6%,アジア系3.0%である。デンバー市をはじめとする主要都市は,ロッキー山脈東側に南北方向に延びるフロント・レンジと呼ばれる地帯に位置しており,人口の80%がこの地域に集中している。またその約65%がデンバー市を中心とする大都市圏に集中している。

 コロラド州の主要都市の人口(2013年国勢調査推定)は以下の通りである。

デンバー都市圏       約300万人
デンバー市(州都)     約65万人
コロラド・スプリングス市  約44万人


 エ その他

・州花  ロッキー・マウンテン・オダマキ (Rocky Mountain Columbine)
・州鳥  カタシ・ロクロシトド (Lark Bunting)
・州木  アメリカ・ハリモミ (Blue Spruce)
・州の動物  ロッキー・マウンテン・オオツノヒツジ (Rocky Mountain Bighorn Sheep)



2 政治

(1) 政治情勢概況 

 コロラド州は自由,保守の傾向が強い西部州という印象があるが,戦後の歴史で見る限り,大統領選挙における支持,州知事,連邦議員及び州議会議員ポストに占める割合は,民主・共和両党がほぼ互角となっている。コロラド州が「平衡州」,「振り子州」と呼ばれる所以である。農村部及び軍基地を抱える地域では保守色が強く,州都デンバー市及びコロラド大学のあるボルダー市では,大都市及び学園都市にありがちな傾向そのままに,リベラル色が強いという地域差はあるが,選挙人登録で見る党派別支持の割合は,長年,二大政党で分かち合ってきており,この二大政党間の力の平衡がコロラド州の政治を特徴付けている。2012年の大統領選挙においても,両候補による接戦が直前まで続いた。

 ただし,過去二回の大統領選挙においては,接戦ではあったが,民主党が連続して勝利している。その要因としては,1990年代から続いている人工増加(特にヒスパニック系)による人口動態の変化及び無党派層の増加があると言われている。

 コロラド州レベルでは,知事,議会上下院のすべてが一つの党でまとまることを嫌う伝統があったが,2012年以降,民主党が知事,州の上院及び下院で多数を占める状況となった。しかしながら,2013年には共和党側が,根強い銃規制に対する反対を利用し,民主党議員2名のリコールに成功したため,州上院における民主党の多数が1議席差となった。さらに,2014年の中間選挙で,全国的な共和党旋風に乗り,数年ぶりに共和党が州上院多数を奪還した他,州の要職においても共和党候補者が当選を果たし,「振り子州」としての様相を改めて見せる結果となった。

 

(2) 連邦議員

ア 連邦上院議員(2議席)

 1995年~2004年は共和党による2議席独占が続き,その後,共和党と民主党が1議席づつを分け合う流れにあったが,2008~2014年は,民主党による2議席独占となった。2014年の中間選挙においては,上院議員1議席の改選が行われたが,共和党の有力若手議員のコーリー・ガードナー連邦下院議員が連邦上院議員選挙に出馬し,共和党優位の風潮に乗り,現職で民主党のマーク・ユーダル議員に勝利し,上院2議席のうち,民主党のマイケル・ベネット連邦上院議員と1議席づつを分け合うこととなった。

【連邦上院議員】
コーリー・ガードナー    (Cory Gardner)  (共)  2020年改選
マイケル・ベネット  (Michael Bennet)  (民)  2016年改選

イ 連邦下院議員(7議席)

 1992年まで民主,共和両党で3議席ずつ分け合う形が続いてきたが(当時は6議席),1992年の選挙で共和党が4議席を占めて以来,共和党4議席,民主党2議席の態勢が続いた。2002年の選挙からコロラド州は1議席増となったが,共和党が新7区で勝利して,共和党5議席,民主党2議席となった。

 2004年以降は民主党躍進の時代となり共和党の現職議員を破り,一時は全7議席中5議席を民主党が占めるに至った。その揺り戻しが2010年の選挙で起こり,第3区・第4区(いずれも農村部)で議席は共和党に戻り,その後,共和党4議席,民主党3議席の状態が継続した。2014年度の選挙では第6区が全国的に注目されたが,結果的に現職で共和党のマイク・コフマン議員が再選を果たした。このため,両党の議席数は以前と変わらず、共和党4議席,民主党3議席が維持された。

【連邦下院議員】

第1区

ダイアナ・デゲット  (Diana DeGette)

第2区

ジェレッド・ポリス   (Jared Polis)

第3区

スコット・ティプトン   (Scott Tipton)

第4区

ケン・バック  (Ken Buck)

第5区

ダグ・ランボーン    (Doug Lamborn)

第6区

マイク・コフマン   (Mike Coffman)

第7区

エド・パールマッター  (Ed Perlmutter)

(3) 州議会と州政府

ア 州議会

 州議会は,上院(定員35名)と下院(定員65名)より成る。近年における党派別勢力は以下のとおり。

● 2002年の選挙で共和党が上院で多数を奪回して,上下両院とも共和党優勢となる。
● 2004年の選挙では上下院とも民主党優勢に逆転した。
● 2006年の選挙では民主党がさらに議席を伸ばした。
● 2008年の選挙では多少の変動はあったものの,民主党優勢が続いた。
● 2013年に州上院の2議席がリコールされ共和党に奪取された。中間選挙前の2014年6月時点では民主党の多数はわずか1議席差となっていた。
● 2014年の選挙では共和党が議席を伸ばし,約10年ぶりに州上院で多数を奪還した。選挙開票時には,州下院においても共和党が優勢かと見られたが,最終的には,1議席差で民主党が優位を維持し,ねじれ現象をもたらす結果となった。

 

民主党

共和党

州上院

17名

18名

35名

州下院

33名

32名

65名

 

イ 州政府の主要政策と課題

 コロラド州は,従来の鉱山業及び農業依存の経済からの脱却を図り,1980年代から情報通信,ハイテク,宇宙,バイオテクノロジー等の技術分野に熱心に取り組む一方で,州の自然を活かした観光(国立公園,スキー,狩猟,釣魚)にも官民挙げて力を入れてきた。1995年にデンバー国際空港が開業すると,大量の観光客を呼び込み,さらにコロラド州が地理的に米国のほぼ中心にあることとも相俟って,人的交流・物流の拠点として重要性を増し,コロラド州は高度経済成長を遂げた。

 2000年になると米国全体の経済が減速気味となったこともあり,コロラド州経済も停滞し始め,州財政に影響が出るようになった。そのため州の支出に制限を設けた納税者憲章(Tax Payer's Bill of Rights: TABOR,予算は前年度の実質支出に人口増加とインフレのみ反映させた額を上限とし,余剰は納税者に返還する)が大きな足枷となっていると認識され,2005年から5年間に限り停止する措置が取られた。ここ数年はTABORに関する議論は俎上に上ってこなかったが,2013年,州の教育予算を捻出するためにTABORの廃止を含んだ税法改革案がコロラド州知事により提出され,住民投票により同改革案は却下された。

 また,2014年1月から嗜好用マリファナの販売が始まった。初日の売り上げは100万ドルを越え,収益から得られる税収は年間で6,700万ドルと見込まれており,増収分は教育関係の予算に充当される。また石油・ガス掘削ブームに乗って,州経済も徐々に上向きとなってきたが,開発を進める石油・ガス会社と,石油・ガス採掘の環境への懸念を抱く環境団体との対立により,フラッキングの規制に関する議論が活発化している。

 2015年の政府の課題としては,強い州経済の維持及び企業誘致,人口流入に対応するためのインフラ整備,教育,エネルギー産業,保健分野への注力,マリファナ産業の発展と治安維持,TABORを含む予算にかかる問題の解消等があげられている。

ウ 州知事選挙

 2010年の選挙は,序盤では共和党候補が有利であったが,スキャンダルと人選ミスが重なって共和党内が分裂し,最終的には民主党の勝利となり,ビジネスマンの経歴を持つヒッケンルーパー氏が知事となった。同知事は,厳格な銃規制導入に象徴されるリベラルに傾斜しすきた政策や,無差別殺人犯に対する死刑執行について明確な姿勢を示さず執行を延期する等リーダーシップへの疑問が呈されるところとなり,人気に陰りが出た。2014年の中間選挙では,共和党の元連邦下院議員のボブ・ボープレイズ候補が。強い共和党理念の下,支持率を順調に上げたが,接戦の末,現職で民主党のヒッケンルーパー知事が勝利を収めた。

【コロラド州公選職】  

知事 (Governor)

ジョン・ヒッケンルーパー (John Hickenlooper)

副知事 (Lt. Governor)

ジョセフ・ガーシア (Joseph Garcia)

州務長官 (Sec. of State)

ウェイン・ウィリアムズ (Wayne Williams)

司法長官 (Attorney General)

シンシア・コフマン (Cynthia Coffman)

財務長官 (Treasurer)

ウォーカー・ステイプルトン (Walker Stapleton)

 

エ その他

主要都市の市長は次の通り。

デンバー市(州都)     マイケル・ハンコック (Michel Hancock)   2015年改選
コロラド・スプリングス市  スティーブ・バック (Steve Bach)   2015年改選



3 経済及び産業

(1)経済概況

 コロラド州都デンバー市を中心とするメトロデンバー圏の主要経済は中心部から郊外の広大な農耕地域に至るまで,農業・畜産業,工業・製造業,建設業,流通産業,ハイテク産業などがあり,1990年代に入り,多くの軽工業の発展と観光資源を活かした観光産業にも力を入れ,経済の多様化を図っている。雄大なロッキー山脈,素晴らしいスキー場,大西部といったイメージのコロラド州は,最近ではこうした自然に加え,「シリコン・マウンテン」と呼ばれるほどハイテク産業や研究開発活動が盛んな地域である。コロラドは米国内最後のフロンティア地域と言われており,その経済は,最近は全米的な不況の影響があるものの,失業率が低く(2014末4.0%),治安も比較的安定している。一般的に教育水準も高く,また,対日認識は友好的である。コロラド州は歴史的には冷戦体制下の軍関連施設の拠点として成長しているため通信関連,航空・宇宙産業をはじめとする高度な技術,人材が集積されている地域である。これに交通の利便性,住環境の良さなども加わり,過去10年間でシリコンバレー等からの移住が増え,人口は2014年の時点で推定約536万人になった。このうち約280万人が州の労働力を担っており(出典:Bureau of labor statistics),コロラド州は,2014年に大学以上の学位を持った成人の人口の割合は37.0%となりマサチューセッツ州に次いで2位と全米平均を大きく上回っている。2013年の一人あたりのGDPは46,897米ドルであった。

(2)主要産業

ア 農業・畜産

 第一次産業は開拓時代から培われてきた。約265万頭の畜牛がおり,コロラドは全米で第4位の牛肉の生産州となっている。現在,農業生産品 は牛,小麦,乳製品,トウモロコシ及び干し草である。毎年1月にはデンバー市のコロシアムで100年を超える歴史を持つ「ストックショー」が開催され,家畜の競売,ロデオ,品評会などが行われる。


イ 航空宇宙産業
カリフォルニア州,フロリダ州に次いで,3番目に大きな宇宙産業経済を有する。コロラドスプリングス市にあるピーターソン空軍基地は本土防衛の主要な役割を担っているほか,2万8千人強の軍事関係者及び1万人強の民間人がコロラド州内の軍事基地に駐在している。コロラド州に宇宙産業が集積した理由として,地政学的に恵まれた立地条件,東海岸と西海岸の双方に行くのに便利なこと,政府の技術研究施設が多数あること,地元の大学が高学歴の労働者を養成していること,生活の質が良いことがあげられる。さらにコロラド州政府がハイテク産業を支援していることも大きな要素となっている。


ウ エネルギー鉱業・天然資源
コロラド州は全米における鉱業の中枢地域でもあり,長年鉱物採取及び石油産業により成り立ってきた。主な鉱物資源は,石炭,金,鉛,石膏,石灰石,銀,モリブデン,チタン,ウラン,亜鉛,大理石などである。太陽エネルギー,風力などの再生可能エネルギー産業も盛んで,2020年までに州内の総発電量の30%を再生可能エネルギーからまかなうことを目標にしている。また,コロラド州には,国立再生可能エネルギー研究所(NREL)がある。


エ 通信産業
コロラド州には2490社の通信関連企業があり,42,810人の雇用を創出している。以前はケーブルTV企業が多数あったが,現在は,それらの企業とIT産業が連携して新たな通信事業を立ち上げるケースが増えている。


オ 観光産業
コロラド州は,年間を通して,特に冬は世界的にも有名なスキーリゾート,夏は多くのレクリエーション活動や素晴らしい光景で,世界中の観光客を魅了している。

カ 国際貿易
コロラド州の主要貿易相手国はカナダ,メキシコ,中国,日本である。その主要品目は,半導体,電気・電子機器,機械類や事務機器などのハイテク製品であり,輸出総額は,約84億ドルである(2014年)。

キ その他
今後コロラド州で期待される産業は,ヘルスケア産業,バイオテクノロジー,再生可能エネルギーなど。対日関係は6の(3)を参照。




4 文化

(1)教育

  コロラド州は,小中高校の生徒・児童数874,1809人,学校区178,公立小中高等学校数1,822校(教育年度2013年~2014年)の中規模の州であるが、この20年間、生徒・児童数が年々増え続けている中で(約20万人増),近年の不景気にともなう教育費予算削減により,10億ドルの教育予算が不足していると言われている。

 2013年,ヒッケンルーパー知事が,教育関連予算9億5000万ドルを確保するための増税案を住民選挙にかけたが, 支出先の不透明さ, 州の権利憲章における州納税者の権利の排除に対する反対が強く否決された。コロラド州の2014-2015年の学校区への教育関連予算は59億ドルで,その内訳は(州税39.5億ドル,車両登録税等1.35億ドル, 固定資産税18.5億ドルとなっている。)ちなみに, 都心15学校区が, 全生徒・児童数の68%を占めている。 

  生徒の人種別構成は,ヨーロッパ系が54.5%,ヒスパニック系が33.1%,アフリカ系が4.7%,アジア太平洋系が3.1%,アメリカ/アラスカ先住民が0.7%となっている。
義務教育年齢は、州法で8月1日までに6歳となる子供から17歳以下の子供と定められている。

 2013-2014年における公立高校の卒業率は77.3%で、昨年度より0.4%向上した。

  高等教育機関としては,同州で最も長い伝統を持つコロラド大学をはじめ,州立の4年制高等教育機関数が13校,デンバー大学等私立の高等教育機関が7校ある。また日本語への関心も高く,コロラド大学ボルダー校,コロラド州立大学等,7つ以上の大学が日本語及び日本関連講座を有しており,一部の公立小中高等学校でも日本語教育が行われている。



5 治安情勢

 2014年FBI発表の犯罪統計によれば,2013年にコロラド州において発生した犯罪の総件数は156,283件で,前年の155,293件より0.6%増加している。
なお,コロラド州における主な犯罪の発生件数及び対前年比犯罪発生率は以下のとおり。

犯罪種別

2012年(件数)

2013年(件数)

前年比

殺人

強姦

強盗

加重暴行

住居侵入窃盗

窃盗

自動車盗

162

2,113

3,395

10,353

26,157

101,021

12,092

178

2,934

3,151

9,963

25,081

102,443

12,533

9.9%

38.9%

‐7.2%

-3.8%

‐4.1%

1.4%

3.6%

 (資料出典:FBI犯罪統計)

(注:強姦の定義は、2012年までは被害者女性の意に反し強要された性行為であったが、2013年により広範囲なものに変更された。)



6 日本との関係

(1)コロラド州における日系人の歴史

 1886年に信州上田藩主次男の松平忠厚が日本人として初めてコロラドの地を踏んで以来,日本人移民がコロラドに移り住むようになり,炭坑夫・鉄道工夫等として働いた。やがて日系移民は,州内各地で野菜,小麦,家畜飼料等の生産に従事するようになった。

 日本軍による真珠湾攻撃の後,ルーズベルト大統領は太平洋沿岸地域の日系人を内陸へ移動させることを決定した。1942年4月,米国西部10州の代表がこれら日系人の受入れ先を協議するためユタ州ソルトレイク・シティ市に会した際,躊躇することなく受入れを申し出たのはコロラド州のラルフ・カー知事(当時)のみであった。当初の案では内陸部に50から75の仮設収容所を作り,日系人が住居と職業を見つけるまでの避難所とする方向であったが,カー知事以外の出席者は受入れを快諾せず,結局武装兵士の監視のついた10ヵ所の半恒久的拘留所を設け,そこに収容することになった。コロラド州にもグラナダ収容所 (通称アマチ収容所)が設けられ,最大時で約8千人が収容された。

 カー知事は,対日敵視が渦巻く中,人道主義と民主主義を貫き,日系米国人も憲法で保障された権利を,他の米国人と同様保障されると主張したが,受け入れられなかった。1942年,州知事を2期・4年間勤めたカー氏は連邦上院議員選挙に出馬したが,日系人への憎悪を公表して憚らない対立候補に“Jap-lover”と非難され,わずか3,600票余りの差で破れた。1999年12月,当地有力紙であるデンバー・ポスト紙が,カー元知事をコロラド州を代表する20世紀の人物として選んだことは,高い人権意識の表れとされるが,同時に当地社会の親日的な感情を示すものであるとも言える。

 デンバー市内のサクラ・スクエアには,カー知事のゆるぎないアメリカ民主主義への信念を讃えて,記念の胸像が建てられている。またカー知事の偉業を記念して,2008年8月国道285号線の一部(C470とケノーシャ峠間の約240マイル)が「ラルフ・カー・メモリアル・ハイウェイ」と命名された。同国道は南カリフォルニアからの移住者がニューメキシコ州経由でコロラド州に入るときに辿った道で,カー知事は州境にミッションを送って移住者を迎えた。 

 現在のコロラド州における日系人の多くはデンバー首都圏に集中しており,多岐にわたる職業に従事している。2007年,コロラド日系人会は創立100周年を迎え,各種記念行事が実施された。また2008年には全米日系人博物館主催により,1988年の「日系米国人補償法」(“Civil Liberties Act of 1988”)の制定20周年を記念する日系人の大会がデンバー市にて開催され,全米各地から日系人の代表が集まった。さらに,2014年,日米関係の強化への貢献を目的とし,多様なリーダーを結集し,ステークホルダーとの交流の場の提供や,コミュニティと政財界にとって有益な課題に取り組む米日カウンシルのロッキーマウンテン支部が設立された。

(2)成田・デンバー間の直行便就航

  2013年6月,ユナイテッド航空は成田・デンバー間の直行便を就航を実現させた。本直行便は,デンバー側が長年実現を希望していたもので,今後益々,我が国とコロラド州の関係の発展に大きく寄与することが期待される。

(3)文化交流

  コロラド州の対日関心は高く,日本との学術・文化交流が活発である。コロラド州と,山形県の姉妹州関係を始め,デンバー・高山姉妹都市等交流が多い。州内9都市と日本の都市との姉妹都市関係を有しており,学生等の人物交流も盛んに行われている。1989年デンバー市にコロラド日米協会が発足。また,1994年にはコロラド・スプリングスにも南コロラド日米協会が設立され,姉妹都市交流等活発な活動を行っている。
2012年は,州内6カ所で日米桜寄贈100周年記念植樹が行われた。2014年はボルダー市と山形市の姉妹都市締結20周年で,同市の市長を始めとした一行が当地を訪れた。また他都市でも,年間を通じて多数の日本関係文化行事が実施されている。

(4)学術関係

  コロラド州からはJETプログラムにより,毎年約40名の参加者を送り出している。また管轄4州より毎年1~2名が国費留学生として渡日している。

(5)投資・貿易

  コロラド州に進出しているわが国関連の企業は約70社である。進出企業の業種としては,商社,製造,エレクトロニクス,光学機器,エネルギーなど多様であり,特にハイテク企業がR&Dや販売の拠点を置いている例が多い。コロラド州デンバー市には日系進出企業によってコロラド日本企業懇話会が組織されている。また,我が国は同州にとってカナダ,メキシコ,中国に次ぐ第4位の輸出相手国(輸出額約5.1億ドル:2014年)となっている。 2012年には,ヒタチ・データ・システム社が,コロラド州における大幅な事業拡大を,2014年末には,パナソニック・エンタープライズ・ソリューションズ社のコロラド州への拠点移転を発表し,今後も日本企業のコロラド州の進出には,大きな期待が寄せられている。


(6)要人往来

ア 訪米
・1981年 9月: デンバー市(常陸宮殿下・妃殿下)
・1987年 7月: コロラド州(板垣清一郎山形県知事)
・1994年 6月: ロングモント市,デンバー市(天皇皇后両陛下)
・1996年 6月: コロラド州(髙橋和雄山形県知事)
・1997年 6月: デンバーサミット(橋本龍太郎総理大臣,池田行彦外務大臣,三塚博大蔵大臣,佐藤信二通産大臣)
・2001年 9月: コロラド州(髙橋和雄山形県知事)
・2005年 4月: アスペン市(石破茂前防衛大臣)
・2005年10月: コロラド・スプリングス市(萱沼俊夫富士吉田市長)
・2006年 6月: アスペン市(尾身幸次衆議院議員)
・2006年 9月: コロラド・スプリングス市(小沢一郎民主党代表)
・2006年 7月: コロラド州(齋藤弘山形県知事)
・2009年 3月: コロラド州(橋本聖子外務副大臣)
・2015年 2月: デンバー市(國島芳明高山市市長)

イ 訪日
・1966年 3月: 高山市 他(トーマス・カリガン・デンバー市長)
・1985年 3月: 高山市 他(フェデリコ・ペニア・デンバー市長)
・1986年12月: 山形県 他(ロイ・ローマー・コロラド州知事)
・1996年 6月: 高山市 他(ウェリントン・ウェッブ・デンバー市長)
・1999年11月: 山形県 他(ビル・オーエンス・コロラド州知事)
・2003年 3月: 高山市 他(ウェリントン・ウェッブ・デンバー市長)
・2008年 5月: 高山市 他(ジョン・ヒッケンルーパー・デンバー市長)
・2008年11月: 山形県 他(ビル・リッター・コロラド州知事)
・2010年 3月: 東京都 他(コロラド経済使節団)
・2011年11月: 東京都 他(マイケル・ハンコック・デンバー市長)
・2013年 6月: 東京都 他(マイケル・ハンコック・デンバー市長)

(7) 在留邦人及び日系人

 コロラド州に在留する邦人の数は4,186人(2014年10月,在留邦人数実態調査に基づく人数)。その多くは州都であるデンバー首都圏に居住しているが,コロラド・スプリングス市,ボルダー市等にも居住している。日系人(2000年の国勢調査に対し「日本人」または「日本人との混血」 と回答した人)の数は約1万9千人となっている。一般的に邦人社会と現地社会との関係は良好な状態に保たれている。また,デンバー首都圏にはデンバー日本語補習学校及びコロラド日本語学校がある。

(8) 姉妹州・都市関係

 コロラド州は山形県と姉妹州・県関係を有している。また,以下の諸都市との間で姉妹都市関係が結ばれ,活発な交流を行っている。

アスペン市 占冠村(北海道),勝山市(福井県)
キャニオンシティー市 河北町(山形県)
グリーリー市 守谷町(茨城県)
コロラド・スプリングス市 富士吉田市(山梨県)
デンバー市 高山市(岐阜県)
フリスコ市 西川町(山形県)
ボルダー市 山形市(山形県)
ロングモント市 茅野市(長野県)
ブルームフィールド市 上田市(長野県)